Pollo Guisado: The Dominican Stewed Chicken - Ambrosia Craft

ポヨ・ギサード:ドミニカ共和国風チキン煮込み


ソフリートの香りには、時間を止める力がある。熱い油に玉ねぎが弾ける音、ガーリックが芳醇な香りを放つ瞬間、クミンとオレガノが出会うあの一体感――「なんか今日のご飯は美味しくなりそう」と家族がみんな寄ってくるドミニカ共和国の台所。

ポヨ・ギサードは家庭の味の代表格。家族が集まる席に必ず現れる料理で、誰かを元気づけたいときにアブエラ(おばあちゃん)が作ってくれる一皿。細かいレシピでなくて、目と音、香りで作り方で受け継がれてきた。どのドミニカ系の家庭にもバージョンがあるけれど、柔らかい鶏肉、旨みたっぷりのソース、ソースが染み込んだ何杯もおかわりしたくなるご飯、という構成は鉄板。

日本では食材探しに少し工夫が必要。ただこの料理は、アレンジの幅が聞き、大体の場合おいしく仕上がる。日本のピーマンでもイケるし、鶏ももの肉質はドミニカ共和国のものよりよいことも多々ある。キッチンに眠っているワインがあるなら、今こそ出番。

ドミニカ料理の心

ポヨ・ギサードは、ドミニカ料理の特別さを体現した一品と言える。スペイン料理の技法に地元の食材を合わせ、世代を超えて家族を養ってきた母たちの愛情という調味料で仕上げられた料理。玉ねぎ、にんにく、ピーマン、コリアンダー(パクチー)で作るソフリートのベースは、ドミニカ共和国の料理の土台となる味だ。

このレシピの魅力はアレンジ自在なところ。ジャガイモを入れる家もあれば、ニンジンを加える家もある。ワインの代わりにビールを使う人もいれば、味のバランスに砂糖をひとつまみ足す人もいる。正解はひとつではなく、作り手の数だけ物語がある。

材料(4〜6人分)

チキン用

  • 鶏丸ごと 1羽(約1.5kg/ぶつ切り)または 鶏もも肉 8枚

  • サラダ油 大さじ2

  • 塩 小さじ1

  • 黒こしょう 小さじ1/2

  • 乾燥オレガノ 小さじ1

  • 醤油 大さじ1(コクを出す隠し味)

ソフリート用

  • 玉ねぎ(大)1個(みじん切り)

  • ピーマン 1個(赤または緑、刻む)

  • にんにく 4片(みじん切り)

  • コリアンダー(パクチー)1/4カップ(刻む)※乾燥なら大さじ2

  • トマトペースト 大さじ2

  • アナトー油 大さじ1(またはパプリカ小さじ1+油)

追加の調味・液体

  • ベイリーフ(ローリエ)2枚

  • クミンパウダー 小さじ1

  • チキンブイヨンキューブ 1個(砕く)

  • 白ワイン(料理酒可)1/4カップ(またはビール)

  • チキンストックまたは水 2カップ

  • じゃがいも 中2個(皮をむいて角切り・任意)

  • にんじん 2本(薄切り・任意)

  • 塩・こしょう 適量

作り方

ステップ1:鶏肉に下味をつける
鶏肉の水気をキッチンペーパーでしっかり拭き取る。濡れているときれいに焼き色がつかない。大きなボウルに投入し、塩、こしょう、オレガノ、醤油をもみ込み、準備のあいだ15分置く。醤油は不思議に思えるかもしれないが、塩だけでは出せない奥行きを与える。

ステップ2:鶏肉を焼く
厚手の鍋に油を入れ中強火で熱し、鶏肉を全面こんがり黄金色になるまで焼く。片面およそ6分。ここは焦らない。焼き色が、この料理全体を支える旨みをつくる。焼けた鶏肉は一旦取り出す。

ステップ3:ソフリートを作る
同じ鍋(鶏の旨みが残っている)に玉ねぎを入れ、透き通るまで約5分。ピーマンを加えてさらに3分、柔らかくなっても少し歯ごたえが残るくらいに。にんにくは最後に入れ、30秒で十分。にんにくは焦げやすいため、さっと火を通すだけにとどめる。

トマトペーストとアナトー油を加えて混ぜ、ペーストがわずかに色づくまで2分加熱。ここからが魔法。ペーストが軽くカラメル化し、油にアナトーの色と香りが移り、キッチンがドミニカ共和国のおばあちゃんの家みたいな匂いに包まれる。

ステップ4:まとめて煮る
ワインを注ぎ1分ほど煮立てる。鶏肉を鍋に戻し、ベイリーフ、クミン、砕いたブイヨンを加える。鶏肉がほぼ隠れるくらいまでチキンストック(または水)を注ぐ。

沸いたら弱火に落として蓋をし、25分コトコト。じゃがいもやにんじんを入れる場合はここで加え、さらに15〜20分、鶏が柔らかく野菜に火が通るまで煮る。

ステップ5:仕上げ
ベイリーフを取り出し、味を見て塩・こしょうで調整。ソースは濃厚でややとろみがある状態が目安。ゆるければ蓋を外して数分煮詰め、濃すぎればチキンストック(または水)を少量足す。

刻んだコリアンダーを混ぜ、火を止めて5分休ませる。休ませることで味が落ち着き、まとまる。

現地流の食べ方

白いご飯にたっぷりかけて食べるのが基本。米一粒一粒が旨みたっぷりのスープを吸い、鍋のシメさながらの味わい深さに。可能ならハビチュエラス(赤いんげん豆)を添え、余裕があれば甘いプラタノも。

ドミニカ共和国では、白ご飯(アロス・ブランコ)と赤豆(ハビチュエラス・ロハス)と合わせて、色の組み合わせが国民食を想起させることから「ラ・バンデラ(旗)」と呼ぶ定番の組み合わせになる。

日本で作るときのメモ

日本のスーパーで必要なものは揃うが、いくつかは思わぬ売り場にあることも。アナトーは輸入食品コーナーやスパイス棚にあるかもしれない。見つからなければパプリカでOK。風味は少し変わるが、おいしく仕上がる。

鶏肉は鶏もも肉がおすすめ。ミックス部位が好みなら、精肉売り場で丸鶏をぶつ切りにしてもらってもよい。

何より大切なのは、完璧を求めすぎないこと。ドミニカ料理は感覚で進め、味見しながら「ちょうどいい」に寄せていくスタイル。分量はガイドであってルールではない。まずは書いてある通りに作ってから、自分の味にしていこう。

この料理への思い

食べ物は、私たちを訪ねた土地や大切な人につなげてくれる。ポヨ・ギサードを作ることは、ただの夕食作りではない。何世代にも続く伝統に参加することだ。誰かがひと口目を味わって目を閉じ、満足の息をつくたびに、大切な何かを確かに受け渡している。

この料理の美しさは、本質に忠実なまま、どこの国でもおいしく仕上げられること。サント・ドミンゴで家族に、東京で友人に振る舞っても、美味しさと楽しい会話で食卓に笑みが溢れる。そんな力のある料理。


ドミニカ・ポヨ・ギサード レシピカード

料理タイプ:メイン/ドミニカ料理
下準備:20分 加熱:45分 合計:1時間5分
分量:4〜6人分 難易度:やさしい〜中級

材料(簡易リスト)

  • 鶏丸ごと 1羽(1.5kg)または 鶏もも肉 8枚

  • 玉ねぎ(大)1個(刻む)

  • ピーマン 1個(刻む)

  • にんにく 4片(みじん切り)

  • トマトペースト 大さじ2

  • アナトー油 大さじ1(またはパプリカ)

  • チキンブロス 2カップ

  • 白ワイン 1/4カップ(任意)

  • 調味:塩、こしょう、オレガノ、クミン、ベイリーフ

作り方(概要)

  1. 鶏に下味をつけ、焼き色をつける(約10分)

  2. ソフリート用の野菜を炒める(約8分)

  3. 液体を加えて蓋をして煮る(約25分)

  4. 野菜を加える場合はさらに煮る(約15分)

  5. 仕上げて5分休ませ、提供(約5分)

栄養(1人分・目安)

  • カロリー:380kcal

  • たんぱく質:35g

  • 炭水化物:12g

  • 脂質:22g

  • ナトリウム:890mg

保存

  • 冷蔵:最大3日

  • 冷凍:最大3か月

  • 温め直し:必要に応じてブロスを足し、弱火でやさしく温める